2015/01/22 売主の担保責任について
当社ホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。
このホームページの作成時期は、成人式も終り、1月も残すところ10日あまりとなったころです。
我々の業界(不動産業)では、これから一番忙しい時期をむかえます。
私としては、地方から上京される学生さんも減ってきているように感じていましたが、現実として、近年では地元の大学へ進学される方の割合が増えているようです。
その原因の一つとして、リーマンショック以降の経済的な問題があげられます。2011年では、親からの仕送り額の平均が7万円弱といわれており、子どもにとっては、学費と合わせると相当な負担になります
また、少子化も影響していると考えられます。一家庭の子どもの平均人数が1人か2人ですので、なるべく親元にいてほしいと考える保護者が増えているようです。
さて、今回は、売主の担保責任について説明いたします。これは、宅建試験でもおそらく出題される率が高い事柄です。
売主の担保責任
売買契約において、売買の目的物件に権利または物の瑕疵があった場合に、売主が買主に対して負う責任を売主の担保責任といいます。なお、以下の説明において「善意」というのは、問題とされる事実を知らなかったこと、「悪意」というのは、その事実を知っていることであり、善い、悪いという道徳的・倫理的意味は全くありません。
(1)権利の瑕疵
①他人の権利を売買目的とした契約をしたが、売主がこの権利を取得して買主に移転することができなかった場合(民法第560条、第561条)
善意の買主―――契約解除・損害賠償請求
悪意の買主―――契約解除
※他人物売買自体は、有効な契約として成立します。
②売買の目的物件である権利の一部が他人に属するため、売主がこの部分の権利を買主に移転することができなかった場合(民法第563条、第564条)
善意の買主―――代金減額請求、契約の解除(不足がわかっていれば買わなかった場合)、損害賠償請求
悪意の買主―――代金減額請求
③数量指示売買において、目的物件の数量が不足していた場合(民法第565条)
善意の買主のみ―――代金減額請求、契約の解除(不足がわかっていれば買わなかった場合)、損害賠償請求
・権利行使期間-買主が事実を知った時から1年
④売買の目的物件に地上権、永小作権、地役権、留置権、質権が設定されているとき、または目的物である土地のために存しているとされた地役権が存しなかったとき、あるいは目的物である不動産に対抗力ある賃借権がある場合(民法第566条)
善意の買主のみ―――代金減額請求、契約の解除(契約目的が達せられないとき)
・権利行使期間-買主が事実を知った時から1年
(注)永小作権――小作料を支払って耕作または牧畜をするために他人の土地を使用する物権
(注)留置権――他人の物を占有している者が、その物に関して生じた債権の受けるまでその物を留置して、債務の弁済を間接的に強制する法的担保物権
⑤売買の目的物件に先取特権があるとき、または抵当権が設定されており、
(ア)これらの担保権の実行により、買主が所有権を失った場合(民法第567条)
善意・悪意の買主問わず―――契約解除・損害賠償請求
(イ)買主の出捐(経済的損失のこと)をして所有権を保存した場合(同条2項)
→担保権実行により所有権を失うことを防ぐため費用を支出した場合
善意・悪意の買主問わず―――出費の償還請求・損害賠償請求
(注)先取特権――法律の定める特定の債権を有する者が、債務者の一定の財産から、他の債務者より優先して弁済を受けることができる法的担保物件
(2)物の瑕疵
売買の目的物件に隠れた瑕疵があった場合(民法第570条)
善意の買主のみ―――損害賠償請求、契約解除(契約目的が達せられないとき)
・権利行使期間-買主が事実を知った時から1年
(3)担保責任を負わない旨の特約
売主が担保責任を負わない旨の特約をした場合、民法上は有効である。ただし、その場合でも売主は次のものについては免責されない(民法第572条)
①売主が知っていながら買主に告げなかった事実
②売主が自ら第三者のために設定し、または譲渡した権利
(4)宅地建物取引業法の規定
上記の民法の規定にかかわらず、業法によれば、業者が自ら売主となる宅地建物の売買において、目的物件の瑕疵担保責任に関し、民法に規定する買主の権利行使期間について、引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法の規定よりも買主に不利な特約をしても無効である(同法第40条)
従って、例えば、「引渡しの日から1年に限り責任を負う」旨の特約をした場合は無効であるから、民法の原則の適用に戻り、売主である業者は買主が瑕疵を発見したときから1年間責任を負うことになる。
(5)最近の瑕疵担保責任に関する留意点
①瑕疵担保責任に関する適用法令の複雑化
売買の対象物について隠れた瑕疵が存在した場合、売主は特約がない限り、民法の規定する瑕疵担保責任を負うことになる。しかし、民法の原則規定に対し、特別法によるいくつかの特則がある。
まず、上記(4)のとおり、業者が自ら売主となる不動産売買では業法による瑕疵担保責任の特約の制限があり、商人間の不動産売買では商法上の瑕疵担保責任の特則の適用があり、その上、最近においては「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下、「品確法」という。)や「消費者契約法」が相次いで施行されたことにより、瑕疵担保責任に関する法令の適用はさらに多岐にわたるものとなっている。従って、その適用に当たっては、的確な法律解釈が必要となっている。
これらを整理すると、次のとおりです。
ⅰ 売買における売主の瑕疵担保責任は、特約のない限り民法の規定が適用され、損害賠償と契約の解除についての権利を買主が行使できるのは、「事実を知った(瑕疵を発見した)時から1年間」とされている(民法第670、第566条)
ⅱ 売主が宅建業者で、買主が業者以外の場合には業法第40条が適用される。業法第40条が適用される場合には、瑕疵担保責任を負う期間が目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除いて民法の規定よりも買主に不利となる特約をすると、その特約は無効となる。
ⅲ 商人間の売買では商法第526条が適用され、買主は目的物件を受領したときに遅滞なく瑕疵の有無を検査し、瑕疵の発見の有無にかかわらず、受領後6カ月以内に発見し通知を発しなければ瑕疵担保責任を追及できない。ただし、売主が悪意のときはこの規定の適用はない。
ⅳ 売買対象不動産が新築物件(完成から1年を経過していない未使用住宅)の「構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの(以下、「主要部分等」という。)の隠れた瑕疵については、品確法が適用され、最低10年間は売主に対し瑕疵担保責任が義務付けられることになり、これを特約によって短縮あるいは責任内容を軽減することは無効となる(品確法第95条)。
ⅴ 売主が事業者で、買主が消費者の場合には消費者契約法第8条、10条が適用され、事業者が瑕疵担保責任を一切負わない旨の特約は原則として無効とされる。また、瑕疵担保に関し、民法の規定よりも消費者にとって信義誠実の原則の観点から一方的に不利益な特約をすると無効となる。
最後までお付き合いしていただき、誠にありがとうございました。
われわれインテリジェンス・ネットワーク一同はお客様を第一に考え成長していきます。
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その原因の一つとして、リーマンショック以降の経済的な問題があげられます。2011年では、親からの仕送り額の平均が7万円弱といわれており、子どもにとっては、学費と合わせると相当な負担になります
また、少子化も影響していると考えられます。一家庭の子どもの平均人数が1人か2人ですので、なるべく親元にいてほしいと考える保護者が増えているようです。
さて、今回は、売主の担保責任について説明いたします。これは、宅建試験でもおそらく出題される率が高い事柄です。
売主の担保責任
売買契約において、売買の目的物件に権利または物の瑕疵があった場合に、売主が買主に対して負う責任を売主の担保責任といいます。なお、以下の説明において「善意」というのは、問題とされる事実を知らなかったこと、「悪意」というのは、その事実を知っていることであり、善い、悪いという道徳的・倫理的意味は全くありません。
(1)権利の瑕疵
①他人の権利を売買目的とした契約をしたが、売主がこの権利を取得して買主に移転することができなかった場合(民法第560条、第561条)
善意の買主―――契約解除・損害賠償請求
悪意の買主―――契約解除
※他人物売買自体は、有効な契約として成立します。
②売買の目的物件である権利の一部が他人に属するため、売主がこの部分の権利を買主に移転することができなかった場合(民法第563条、第564条)
善意の買主―――代金減額請求、契約の解除(不足がわかっていれば買わなかった場合)、損害賠償請求
悪意の買主―――代金減額請求
③数量指示売買において、目的物件の数量が不足していた場合(民法第565条)
善意の買主のみ―――代金減額請求、契約の解除(不足がわかっていれば買わなかった場合)、損害賠償請求
・権利行使期間-買主が事実を知った時から1年
④売買の目的物件に地上権、永小作権、地役権、留置権、質権が設定されているとき、または目的物である土地のために存しているとされた地役権が存しなかったとき、あるいは目的物である不動産に対抗力ある賃借権がある場合(民法第566条)
善意の買主のみ―――代金減額請求、契約の解除(契約目的が達せられないとき)
・権利行使期間-買主が事実を知った時から1年
(注)永小作権――小作料を支払って耕作または牧畜をするために他人の土地を使用する物権
(注)留置権――他人の物を占有している者が、その物に関して生じた債権の受けるまでその物を留置して、債務の弁済を間接的に強制する法的担保物権
⑤売買の目的物件に先取特権があるとき、または抵当権が設定されており、
(ア)これらの担保権の実行により、買主が所有権を失った場合(民法第567条)
善意・悪意の買主問わず―――契約解除・損害賠償請求
(イ)買主の出捐(経済的損失のこと)をして所有権を保存した場合(同条2項)
→担保権実行により所有権を失うことを防ぐため費用を支出した場合
善意・悪意の買主問わず―――出費の償還請求・損害賠償請求
(注)先取特権――法律の定める特定の債権を有する者が、債務者の一定の財産から、他の債務者より優先して弁済を受けることができる法的担保物件
(2)物の瑕疵
売買の目的物件に隠れた瑕疵があった場合(民法第570条)
善意の買主のみ―――損害賠償請求、契約解除(契約目的が達せられないとき)
・権利行使期間-買主が事実を知った時から1年
(3)担保責任を負わない旨の特約
売主が担保責任を負わない旨の特約をした場合、民法上は有効である。ただし、その場合でも売主は次のものについては免責されない(民法第572条)
①売主が知っていながら買主に告げなかった事実
②売主が自ら第三者のために設定し、または譲渡した権利
(4)宅地建物取引業法の規定
上記の民法の規定にかかわらず、業法によれば、業者が自ら売主となる宅地建物の売買において、目的物件の瑕疵担保責任に関し、民法に規定する買主の権利行使期間について、引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法の規定よりも買主に不利な特約をしても無効である(同法第40条)
従って、例えば、「引渡しの日から1年に限り責任を負う」旨の特約をした場合は無効であるから、民法の原則の適用に戻り、売主である業者は買主が瑕疵を発見したときから1年間責任を負うことになる。
(5)最近の瑕疵担保責任に関する留意点
①瑕疵担保責任に関する適用法令の複雑化
売買の対象物について隠れた瑕疵が存在した場合、売主は特約がない限り、民法の規定する瑕疵担保責任を負うことになる。しかし、民法の原則規定に対し、特別法によるいくつかの特則がある。
まず、上記(4)のとおり、業者が自ら売主となる不動産売買では業法による瑕疵担保責任の特約の制限があり、商人間の不動産売買では商法上の瑕疵担保責任の特則の適用があり、その上、最近においては「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(以下、「品確法」という。)や「消費者契約法」が相次いで施行されたことにより、瑕疵担保責任に関する法令の適用はさらに多岐にわたるものとなっている。従って、その適用に当たっては、的確な法律解釈が必要となっている。
これらを整理すると、次のとおりです。
ⅰ 売買における売主の瑕疵担保責任は、特約のない限り民法の規定が適用され、損害賠償と契約の解除についての権利を買主が行使できるのは、「事実を知った(瑕疵を発見した)時から1年間」とされている(民法第670、第566条)
ⅱ 売主が宅建業者で、買主が業者以外の場合には業法第40条が適用される。業法第40条が適用される場合には、瑕疵担保責任を負う期間が目的物の引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除いて民法の規定よりも買主に不利となる特約をすると、その特約は無効となる。
ⅲ 商人間の売買では商法第526条が適用され、買主は目的物件を受領したときに遅滞なく瑕疵の有無を検査し、瑕疵の発見の有無にかかわらず、受領後6カ月以内に発見し通知を発しなければ瑕疵担保責任を追及できない。ただし、売主が悪意のときはこの規定の適用はない。
ⅳ 売買対象不動産が新築物件(完成から1年を経過していない未使用住宅)の「構造耐力上主要な部分または雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの(以下、「主要部分等」という。)の隠れた瑕疵については、品確法が適用され、最低10年間は売主に対し瑕疵担保責任が義務付けられることになり、これを特約によって短縮あるいは責任内容を軽減することは無効となる(品確法第95条)。
ⅴ 売主が事業者で、買主が消費者の場合には消費者契約法第8条、10条が適用され、事業者が瑕疵担保責任を一切負わない旨の特約は原則として無効とされる。また、瑕疵担保に関し、民法の規定よりも消費者にとって信義誠実の原則の観点から一方的に不利益な特約をすると無効となる。
最後までお付き合いしていただき、誠にありがとうございました。
われわれインテリジェンス・ネットワーク一同はお客様を第一に考え成長していきます。