ニュース&お知らせ

一覧に戻る

2016/01/28 「消費者契約法」と「賃貸借における特約」



本ホームページをご覧頂き、誠にありがとうございます。
 
今回は契約業務課長がお送りいたします。
 
 
私ごとですが、母の介護休業という事でお休みを頂いていた事で
約5か月ぶりのホームページとなります。
 
最近の寒波で沖縄本島で観測史上初の「雪」観測というニュースがありましたが、
私は、沖縄でも、何年かに一度くらいは雪が降っているものだと思っていたので驚きました。
また、各地で水道管破裂による断水があり、寒波の影響があるようですね。
                        
自宅でも朝、お風呂のお湯はでましたが、キッチンの水道は出ませんでした。
寒いので風邪には気を付けましょう。
 
 
今回は、「消費者契約法」と「賃貸借における特約」について記載して行きますが、
判例を入れながらの説明になりますので、よろしくお願いします。
 
居住用建物の賃貸借における特約と消費者契約法
 消費者契約法の不動産取引についての適用に関しては、居住用建物の賃貸借における一定の特約が、同法第10条(消費者の利益を一方的に害する条項の無効)に該当するのではないかが問題とされた。
それは①通常損耗について賃借人が原状回復費用を負担する条項の有効性、②いわゆる敷引き(敷金の償却)特約の有効性、③契約更新時に賃借人が賃貸人に一定額の更新料を支払う特約の有効性の問題であり、これらについて下級審(簡裁・地裁・高裁)の裁判例が相次いで出されてきた。
そして、平成23年に上記②敷引特約と③更新料支払特約について、初めて最高裁の判断が示された。
 なお、①原状回復費用負担の特約と消費者契約法との関係についての最高裁判例は未だ出されていない(平成25年1月末現在)
 
(1)通常損耗について賃借人がその原状回復費用(修復費用)を負担する旨の特約は有効か
 消費者契約法は、前途のとおり消費者と事業者との契約のみを対象としているので、建物賃貸借では、居住用の建物を個人が賃貸する契約のみが対象となる。
すなわち、賃貸人は、個人でも法人でも事業者に該当するが、賃借人が会社等の法人の場合あるいは個人でも店舗や事務所として借りるものは賃借人も事業者に該当するので同法の適用対象とならない。
 建物賃貸借の終了により、賃借人が退去するに際し、賃借人に何ら責任のない通常損耗(自然損耗・経年劣化)の分の修復費用を賃借人の負担とする旨の特約、すなわちその費用を返還すべき敷金から差し引く旨の特約については、かねてからその有効性が争われ、裁判例も有効とするもの、どのような明確な合意でも無効とするものに分かれていたことは前述した。
しかし、これらの民法、借地借家法など一般法の観点からの議論であった。
 
ところが、消費者契約法の制定により、同法の観点から、たとえ明確な合意がなされたと認められるものであっても、賃借人に責任(故意・過失)のない自然損耗の修復費用を負担させる特約は、消費者の利益を一方的に害する条項を無効とする同法第10条に該当し、無効であるとの裁判例が出された(京都地裁・判決平成16年3月16日)
 
 この事案は、契約書の条項に、明確に自然損耗および通常の使用による損耗について原状回復費用を賃借人が負担する旨の特約があり、賃貸人がその特約に基づいて敷金20万円の全額を返還しないこととした、というケースであった。
 
これについて、裁判所は、まずその前提として「消費者契約法施行前に締結された建物賃貸借契約が同法施行後に当事者の合意により更新された場合、更新後の賃貸借契約には同法の適用がある」とした上で、そのような特約は、賃借人が契約締結に当たって明渡し時に負担しなければならない原状回復費用を予想することが困難であること、賃貸人はその費用を予想することが可能で、これを含めて賃料額を決定できることなどを理由に、同法第10条に該当し、無効であるとした。この判決は、控訴されたが、控訴審の大阪高裁(平成15年12月17日)も、消費者契約法にてらして、一審とまったく同様の判決をした。
 
なお、本問題については、後記の敷引特約に関する最高裁判例(平成23年3月24日判決)の判決理由中において「通常損耗の補修費用」のことに触れた部分があるが、消費者契約法第10条と本問題の関係について、敷引きとは無関係に真正面からこれを取り上げて判断を示した最高裁判例は未だない。
 
(2) いわゆる敷引特約は有効か
 建物賃貸借の終了時に、返還すべき敷金(地域によっては「保証金」と称する)から一定額または一定の率の金額を控除する。いわゆる敷引き(敷金の償却)については、従来からその有効性が裁判で争われ、やはりこれも結論は多種多様であった。
 
 この問題についても、消費者契約法の制定により、その対象となる居住用建物を個人が借りる契約において、前記の同法第10条に該当し無効であるとする裁判例と同条前段(任意規定の適用に比べ消費者の権利を制限し、義務を加重する条項)には該当する後段(信義則に反して消費者の利益を一方的に害するもの)には該当せず有効とする裁判例とに分かれていたが、最高裁が平成23年に2つの判決を出し、いずれの事案についても消費者契約法第10条の前段には該当しても後段の要件には該当しないので有効とした。
 

 
(3) 更新料支払特約は有効か
 賃貸借契約の期間満了により、契約を更新するに当たり、賃借人が賃貸人に一定額を支払う金銭を更新料といい、この支払に関する契約条項のことを更新料支払特約という。
 
 これは、借地、借家、居住用、業務用のいずれかにおいても行われるが、必ずしも全国的に行われているものではなく、首都圏、京阪地域では多く見られ、またその他の一部でも見られる地域的特色のあるものである。
 
更新料は、民法や借地借家法その他の法律に規定されているものではなく、かねてからその有効性が裁判で争われ、具体的ケースごとに有効・無効の判断がなされてきた。
 
ところが、平成13年4月1日、前記の消費者契約法の施行によって、新たな展開がなされることになった。すなわち、前記のとおり同法第10条は、消費者の利益を一方的に害する契約条項を無効とするが、同法の適用のある建物賃貸借契約(個人が居住用建物を賃借する契約)については、この更新料支払特約自体が、同条に該当し無効ではないか、が議論され、いくつかの事案が裁判の場で争われるに至った。
 
 そして、平成21年8月27日、大阪高裁において、高裁レベルでは初めて、更新料支払特約は同条に該当し無効であるとの判決を出し、さらに翌22年2月24日、同高裁が無効との判決を出し、この3件の事案が最高裁に上告され、平成23年7月15日、本問題をめぐる3件に関し、最高裁の初判断が示された。
 
最高裁は、まず更新料の性格について、要旨次のように述べる
 更新料が、いかなる性質を有するかは、賃貸借契約成立前後の当事者双方の事情、更新料条項が成立するに至った経緯その他諸般の事情を総合考慮し、具体的事実関係に即して判断されるべきであるが、更新料は、賃料と共に賃貸人の事業の収益の一部を構成するのが通常であり、その支払により賃借人は円満に物件の使用を継続することができることからすると、更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である。
 
その上で、消費者契約法第10条の要件に該当するかの判断において、同条前段には該当するが更新料支払条項自体が同条後段に該当するものではない旨を説示した。その理由の要旨は次のとおりである。
更新料条項についてみると、更新料が、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的がないなどということはできない。また、一定の地域において、期間満了の際、賃借人が賃貸人に対し更新料の支払をする例が少なからず存することは公知であることや、従前、裁判上の和解手続等においても、更新料条項は公序良俗に反するなどとして、これを当然に無効とする取扱いがされてこなかったことは裁判所に顕著であることからすると、更新料条項が賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載され、賃借人と賃貸人との間に更新料の支払に関する明確な合意が成立している場合に、賃借人と賃貸人との間に、更新料条項に関する情報の質及び量並びに交渉力について、看過し得ないほどの格差存するとみることもできない。
 そうすると、賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法第10条にいう、「民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの」に当たらないと解するのが相当である。
 
そして、上告された3件のケースのいずれについても有効とした。
 
消費者団体による差止請求
 平成18年6月公布の改正法(法律第56号)により、消費者団体うち、内閣総理大臣の認定を受けたもの(これを「適格消費者団体」という。)が、事業者等に対して、一定の要件の下に「差止請求」ができることとなった。これは、一人ひとりの消費者より、一定の消費者団体が事業者に対して立ち向かうほうが、消費者保護をより実効的なものとすることができるとの考慮の下に創設されたものである。
 
 適格消費者団体は、消費者の被害の発生または拡大を防止するために、
①事業者等が消費者契約の締結について勧誘するに際し、不特定かつ多数の消費者に対して一定の不当勧誘行為を行い、または行うおそれがあるとき
②事業者等が、消費者契約を締結するに際し、不特定かつ多数の消費者との間で一定の不当条項を含む消費者契約の申込み、またはその承諾の意思表示を現に行い、または行うおそれがあるとき
は、事業者等に対し、その行為の停止もしくは予防またはその行為に供したものの廃棄もしくは除去その他の行為の停止、もしくは予防に必要な処置をとることを請求することができることになった(法第12条)
 
宅建業者としての留意点(まとめ)
最後に、宅地建物取引に関与する宅建業者が、消費者契約法との関連で留意すべき点を要約すれば、次のとおりである。
 
(1)自らが取引の当事者になるか、媒介または代理をする立場かを問わず、その契約がそもそも消費者契約に該当するのかどうかを調べて確定する。
(2)消費者契約に該当するものであれば
 ①法による取消し原因となるような、不適切な勧誘行為を行わないよう注意する。
 ②もし、ウッカリ行ってしまった場合は、消費者の誤解を取り除き、または消費者の困惑状況を解消したうえで再度契約を締結し直す。
 ③契約書の各条項を、一つひとつチェックし、同法第8条から第10条に規定されているような無効とされる不当条項がないかどうか精査する。
  ・第8条:事業者の損害賠償責任の免除に関する条項
  ・第9条:消費者が支払う損害賠償の予定等に関する条項
  ・第10条:消費者の利益を一方的に害する条項
(3)居住用建物を個人が借りる賃貸借契約を媒介する場合には、更新や、契約終了の際の賃借人の負担・義務等に関する最高裁判例を正確に把握し、適切な指導をする。
 
最高裁判例で更新料は更新の期間・更新料が高額過ぎるなどの要件がなければという条件付きですが認められました。
関東で一般的な、2年契約更新で更新料1ヶ月については問題は無いとの判断です。
 
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

 
我々インテリジェンスネットワーク一同は、
お客様に有益な情報を随時発信して参ります!!

ページの先頭へ

一覧に戻る